科学計測システムの構築・コンサルティング

Astronomical InstRuments and Telescopes Remote Control System

AIRTReCSとは、研究プロフェッショナル向けの科学計測機器を統合制御するソフトウエアシステムの開発フレームワークです。実験、測定の目的に応じて、システムのカスタマイズを行いご提供致します。特に、天文学観測用の天体望遠鏡、観測装置の制御やデータ処理を行う機能を豊富に持ち、研究者の皆様の測定作業効率を向上させます。

特徴

専門的な実験計測用のソフトウエアシステムを開発する場合に、計測機器ベンダーが用意したツールなどを使用してプログラムのコーディングをされる研究者の方は多いです。こうしたソフトウエアシステムの場合、機器の操作やステータス、計測データの取得から、それらを操作、表示するユーザーインターフェイス、データの簡易処理まで、直列な設計となりがちです。単純な計測であればこのようなシステムでも十分ですが、複数の計測機器を使用する複雑な測定の場合、研究アイデアの実現や結果のフィードバックを効率的に行うシステムが必要です。特に天文学観測用の機器の場合、研究者は観測によって得られたデータや、天候などの環境ステータスの情報を適切に読み取り、観測の方針を判断しなければなりません。

従来のシステムの例

従来のシステムの例。ユーザーインターフェイスから機器まで直列なシステムでは、保守のコストが高い

このように、複数の機器の操作やステータス監視が必要な計測においては、多くの機器を統合制御し、取得データを管理するソフトウエアシステムを構築 することになります。前述のような直列な設計の場合、共通する機能の再利用性、機器の交換・更新時のソフトウエアのアップデートに掛かる時間的なコストが 大きくなり、新たな研究アイデアをソフトウエアシステムに反映させる作業は非常に煩雑です。AIRTReCSは、並列なシステム設計によって、多くの計測 機器などを共通のユーザーインターフェイス下に置いています。そのため、このような煩雑な作業に掛かる時間を最小化し、研究アイデアを構築する作業に集中 頂けます。

AIRTReCSのソフトウエアシステム

AIRTReCSのソフトウエアシステム。必要な部分だけの修正で済み、保守のコストが小さくなるため、研究者は研究アイデアの構築に集中できる

機能

AIRTReCSは主に以下の機能を提供します。

デバイス管理

各計測機器のコマンド発行、ステータス取得と記録の機能を提供します。計測機器のデバイスドライバはモジュール化されていますので、計測システムに合わせたドライバを開発、搭載します。計測機器類へのコマンドは、AMQPなどのメッセージングシステムを介して配布できますので、制御計算機はネットワーク上に分散させることも可能です。

マクロ機能

複数のデバイスをシーケンシャルに駆動、ステータス参照、オンサイトデータ解析等を行うためのマクロ機能を提供します。Pythonスクリプトとして記述できますので、お客様の方でも必要な計測に合わせてカスタマイズ頂くことが可能です。

マクロ開発用に、デバイスドライバをシミュレーションモードに切り替えることも可能です。シミュレーションモード時は、実際の計測機器がつながっていなくてもデバイスの応答を返すようになるため、実物を動かさずにマクロのテストを行うことができます。

データ管理、簡易解析

取得データに、計測時のメタデータを付加して保存します。特に、天文学データの保存に使われるFITS形式に対応し、IAUのFITS規約に従ったFITSヘッダを生成、付加します。取得したデータは、自動で簡易解析することが可能です。簡易解析の手順はPythonスクリプトとして記述できますので、お客様の方でもカスタマイズ頂くことが可能です。

プラットホーム

AIRTReCSが動作する推奨環境は以下のとおりです。

  • Python 2.7.x
  • Ubuntu 12.04, 14.04 Desktop (x86またはx64)
  • Windows 7, 8.1

デバイス構成データベースの編集に、以下の環境を使用します。

  • Microsoft Windows 7, 8.1
  • Microsoft Access 2013またはMicrosoft Access 2013 Runtime

フレームワークのコア部分はPure Pythonで書かれていますので、Pythonが動作するプラットフォームへの移植が可能です。順次、Linux以外のWindows、Mac OSXプラットフォームへの移植も進めております。詳しくはお問い合せください。

業務事例

光学望遠鏡による低軌道衛星観測システム/情報通信研究機構様

情報通信研究機構・鹿島宇宙技術センターの35cm光学望遠鏡で低軌道衛星を光学観測し、取得した画像データから衛星軌道を測定するシステムを構築しました。

光学データからの衛星軌道の決定には、望遠鏡の駆動、観測波長を決めるフィルタホイルの駆動、CCDカメラで正確な時刻に撮像開始するためのGPSからのトリガ信号などを制御する必要があります。これらの統合制御をAIRTReCSのマクロ機能を使用して実装しました。研究者は、決まった時刻に動作を開始するマクロをシステムに登録しておけば、観測システムは自動的に目標の低軌道衛星を観測し、位置を測定します。

鹿島宇宙技術センターの研究紹介もご覧ください。

TMT/IRISモーター駆動実験用ソフトウエアシステム/国立天文台様

次世代超大型望遠鏡・TMT(30m望遠鏡)は、国立天文台とアメリカ、カナダ、中国、インドなどの研究機関が協力して計画を進めている望遠鏡です。2021年に稼働開始を目指し、2014年からハワイのマウナケア山頂に建設が始まります。TMTでの初期観測装置として計画されている近赤外線撮像分光装置IRISは、国立天文台が開発を分担しており、私どもは、冷却下でのモーター駆動実験を行うための制御ソフトウエアシステムを構築しました。

熱による背景光等を抑制するために、近赤外線観測装置は液体窒素温度(-196℃)程度まで冷却された状態で運用します。本システムでは、その基礎開発として、冷却下でも動作可能なモーターの駆動実験を行うためにモーターコントローラーと温度コントローラーを同時に制御するシステムを構築しました。研究者は、実験計画に従ってPythonスクリプトを記述し、必要なデータを取得することができます。

お問い合せ

AIRTReCSに興味をお持ちの方は、どうぞお問い合せください。

お客様の実験、計測内容について伺った上でお見積りを差し上げます。ご希望であればAIRTReCSのデモをしに伺います。